2014年10月05日

大岩千穂・笛田博昭ジョイントコンサートのご案内

2014年11月27日(木)19時よりL’operia』公演 大岩千穂 笛田博昭ジョイントコンサートを銀座王子ホールで開演します。
L’operia公演もおかげさまで第5回を迎えることとなりました。
第1回から世界で最も多く上演され不滅の名作と言われている3作品をとりあげてきました。第1回『椿姫』(東京公演)第2回『マダム・バタフライ』(東京公演)第3回『トスカ』(東京公演)第4回『椿姫』(大阪公演)と、どの公演もお客さまにより深く作品の魅力に接していただきオペラと初めて出会った方も、またオペラに詳しい方もオペラ全体の楽曲やストーリーを楽しめる公演を実現することができました。
今年は例年とは趣きを変えて、第2回、第3回の公演でご一緒したテノール笛田博昭さんと共にジョイントコンサートをお届けいたします。
第1部ではグノーの『アヴェ・マリア』、カンツォーネの『マリウ』、黒人霊歌『アメイジング・グレイス』など和やかな雰囲気の中でちょっぴり早いクリスマス気分を味わっていただきます。そして第2部ではグノー作曲『ロミオとジュリエット』、プッチーニ作曲『マダム・バタフライ』のオペラ作品から、凝縮された旨味をアリアとデュエットで、オペラ歌手の《声による芝居》の魅力をお楽しみいただきます。
ピアノは指揮者として活躍している流麗かつダイナミックなピアノを弾く佐藤正浩さんです。晩秋の華やぎをみせ始める銀座でお会いしましょう。
2014年10月 大岩千穂                            

コンサート プログラム
第1部  
グノー作曲『アヴェ・マリア』
カッチーニ作曲『アヴェ・マリア』
カンツォーネ『マリウ』
黒人霊歌『アメイジング・グレイス』ほか

第2部      
グノー作曲『ロミオとジュリエット』から
1幕 “私は夢に生きたい”
2幕 “ああ、太陽よ昇れ”
4幕の愛の二重唱 
         
プッチーニ作曲『マダム・バタフライ』から
1幕 愛の二重唱 “可愛がってくださいね”
2幕 “ある晴れた日に”
3幕 “さらば愛の巣”
ラストシーン “さよなら坊や”
※演目は変更になる可能性はあります。
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2014年02月03日

オペラ『椿姫』ハイライト(対訳字幕付き) 公演のご案内

2014王子ホールチラシデータ .pdf3月7日、大阪のザ・フェニックスホールで、『ベルカントに魅せられて』シリーズ第4回を開催します。
このシリーズは「まず音楽ありき」をモットーにオペラの核を成す「声」を大切にピアニストと歌い手がオペラをハイライトで演じます。
ザ・フェニックスホールの空間一杯にオペラを楽しんでいただくこととして、イタリアの作曲家ヴェルディの代表的なオペラ『椿姫』ハイライトを公演します。
大岩千穂が表題役を歌いますが、テノールとバスバリトンには地元関西を代表する松本薫平氏、片桐直樹氏が出演いたします。そしてピアノは近年オペラ指揮者として関西でも活躍の河原忠之氏が演奏します。
『椿姫』は、パリに実在した高級娼婦をモデルとして描かれ、身分差、貧困、病魔など、純粋な愛を妨げる様々な困難に対する絶望と、最終的な愛の成就とを切なく歌い上げている作品です。人間味あふれるヴェルディの音楽とともに描かれた主人公ヴィオレッタの美しく強い愛の物語、そんな魅力の詰まったオペラです。3月7日はフェニックスホールでの『椿姫』にご期待下さい。
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2013年09月16日

オペラ研究家 岸純信さんのトスカ解説

本年11月22日(金)紀尾井ホールでのオペラ『トスカ』公演にむけて、作品の魅力を立体的にキャッチしていただくためにこのシリーズを作りました。公演まであと2ヶ月。出演者の皆様との稽古も始まります。またスポレッタ役に松浦健さんの出演が決まりました。松浦さんの出演でさらに舞台や芝居の奥行きに深みを増してくださることでしょう。

シリーズ『オペラの3つ扉』トスカ編
このシリーズは一つの作品にスポットを当て、「歴史」「哲学」「音楽」の観点から見て行くことでオペラを3Dメガネをつけて観るように、今まで知っていた作品がより鮮やかによりふくよかに見えてくることでしょう。
今回はオペラ『トスカ』の魅力を音楽的な面から道案内させていただこうと思います。
このシリーズではオペラ研究家の岸純信さんに素敵な解説を書いていただきました。

《トスカ》音楽的道案内   

 プッチーニの《トスカ》は激情の塊と呼びたいオペラ。「映画音楽の祖先」と看做されるほどにフレーズの一つ一つが臨場感に富み、スリルとサスペンスが客席を包み込む。一方、メロディの甘い潤いも特筆すべきもの。激しくドラマティックなシーンが続く中、恋人たちの〈愛の二重唱〉では、熱い語らいから瑞々しい生命感が滲み出る。劇中でほぼ唯一、二人が幸せに酔う名場面であろう。
さて、この《トスカ》を愛する皆様に、改めて申し上げたいことが一つある。
 それは劇中の3人の「来し方」について。オペラの台本には出てこない背景が、サルドゥの原作では詳しく語られる。まずは歌姫トスカ。彼女は実はまだ二十歳そこそこ。ヴェローナの野原を彷徨う孤児が修道女たちに拾われて育ち、声の良さを認められて歌劇場にデビューしたのは弱冠16歳の時である。それから4年で彼女はイタリア全土を制覇、ナポリ王妃の前で独唱できるほどのステイタスを得た。
 だからトスカは信心深く誇り高い。でも時には子供っぽくもある。恋人カヴァラドッシとの二重唱(第1幕)で、やきもちを焼き、「絵の中の女性の目は黒くしてね」と甘えるのも、彼女の娘らしさの表れなのだ。そして第2幕で警視総監スカルピアに迫られて、涙ながらに歌うアリア〈歌に生き、愛に生き〉も、彼女の前半生あればこそ。「私が生き延び、歌手になれたのも全ては神のお蔭!」と日々感謝してきたトスカだけに、こう訴えずにはいられない。「神様、どうしてこのようにお報いなさるのですか?」と。これまでのお恵みは一体何のためであったのでしょうかと、彼女は苦しみ悶えるのである。
そして第3幕では、スカルピアの言を鵜呑みにしたトスカが、恋人の無事を信じて疑わず、偽の処刑を見守る。しかし、彼は銃殺されていた。もはや歌姫は死ぬしかない。信じたもの全てに裏切られ、心には何一つ残っていないのだから。今回は、笑顔の中に童女のような純粋さを覗かせ、歌声にはドラマティックな情熱が漲るソプラノ大岩千穂が、トスカのさまざまな内面を鮮やかに歌いきってくれることだろう。
一方、カヴァラドッシの人物像も複雑なもの。父親はローマの名家の出だが、母はフランス人。だからカヴァラドッシは長らくパリで暮らしていた。劇中で彼に反発する者たちは、何かあるたび「あのフランス野郎め!」と罵ったに違いない。でも、歌姫トスカだけが偏見も持たずにこの青年画家を愛し、尽くしてきた。彼の2つのアリア、純な思いを綴った〈妙なる調和〉(第1幕)と絶望の苦しみを訴える〈星は光りぬ〉(第3幕)がどちらもひときわ率直な表現を採るのも、まさに恋人への深い愛情あればこそ。そして、大詰めでは、自分のためにトスカが人まで殺めたと聞き、カヴァラドッシの心がいっそうの深みを増す。そこで彼は、歌姫と共にユニゾンで輝かしく歌い上げる。自分は死ぬと薄々気付いていても、恋人への遺言代わりに、理想の境地を声高らかに伝えるのである。今回は、新星テノールの笛田博昭が、持ち前の雄々しく豊かな響きで、青年の強い想いを存分に歌い上げてくれるに違いない。
 そして、稀代の敵役、男爵スカルピアも知られざる過去を持つ男。実はシチリア人である彼の心には、貴族特有の「狩猟本能」と情欲の粘着質的な猛りが複雑に絡み合う。第1幕の終盤で、教会で〈テ・デウム〉を唱える人々をよそに、平然と欲望のたけを口にする彼だが、第2幕では歌姫の弱々しい手で敢え無く落命する。それは、神がこの男に下した鉄槌でもあるのだろう。今回は、ヴェテランのバリトン直野資が、この警視総監の酷く冷たい眼差しと暗い情欲がたぎる心を余裕たっぷりに表現してくれるはず。そして、彼の部下スポレッタ役に、同じくヴェテランのテノール松浦健が参加するのも注目のキャスティング。上司の命に忠実でありながら、人間らしさを時折り垣間見せるこの役柄が、彼の緻密な歌いまわしでより厚い存在感を得るものと、今から楽しみにしている。   岸 純信(オペラ研究家)


この公演に関する情報は以下をご覧ください。
http://www.n-genkika.co.jp/tosca.pdf
posted by chiho at 17:26| 公演情報